鼻づまりは整体で楽になる?胸椎と鼻の関係を解説

姿勢を変えると鼻の通りが変わる気がする方へ
鼻がつまって集中できない。薬は飲んでいるけれど、すっきりしない。
そんな中で「背伸びをしたら鼻が通った」「体を起こしたら少し楽になった」という経験をしたことはないでしょうか。
調べてみると「胸椎の〇番のゆがみが鼻炎の原因」といった説明が見つかります。ただ、それをそのまま受け取っていいのかは、判断に迷うところだと思います。
この記事では、鼻づまりと背骨・姿勢の関係について、研究で確認されている範囲と、まだ確認されていない範囲を分けて整理します。
結論:特定の背骨が原因という説明には根拠が足りません
先に結論をお伝えします。
「胸椎の〇番が鼻炎に対応している」という説明を裏づける十分な研究は、現時点で確認されていません。
一方で、体を起こすこと・体を動かすことで鼻の通りが変わることは、複数の研究で確認されています。
つまり「背骨のゆがみが鼻炎を起こしている」のではなく、「姿勢や活動量が鼻の通りやすさに影響している」と考えるほうが、現在分かっていることに近い説明になります。
この記事を読むと、次のことが分かります。
- 鼻づまりがどういう仕組みで起きているのか
- 姿勢や運動で鼻の通りが変わる理由
- 整体にできること、できないこと
鼻づまりは骨ではなく血管で起きています

鼻がつまるとき、実際に何が起きているのでしょうか。
鼻の内側の粘膜には、血液をためられる血管が豊富にあります。この血管がふくらむと粘膜が腫れ、空気の通り道が狭くなります。これが鼻づまりです。骨や軟骨の形が変わっているわけではありません。
この血管の太さを調整しているのが自律神経です。
- 交感神経が働くと血管が縮み、鼻は通りやすくなります
- 副交感神経が優位になると血管がふくらみ、つまりやすくなります
また、健康な方でも左右の鼻は数時間ごとに交互につまりやすくなる「鼻サイクル」という現象があります。片側だけつまることは、それ自体がすぐに異常を意味するわけではありません。
自律神経の働き全般については自律神経の乱れと整体でのアプローチにまとめています。
鼻の通りに関連する要因
体の傾き
背筋を起こして座っているときと、横になっているとき。同じ方でも鼻の通りやすさは変わります。
横向きで寝る姿勢
横向きで寝ると、下になった側がつまりやすくなることが知られています。つまっている側を上にすると楽になることがあります。
口呼吸
鼻がつまると口で呼吸するようになり、口呼吸が続く方では頭が前に出た姿勢になりやすいことが報告されています。姿勢が先か呼吸が先かは一方向に決められず、互いに影響し合っていると考えるほうが実際に近いです。
研究で分かっていること

体を起こすほど鼻は通りやすくなります
健康な成人15人を対象に、座位・30度・60度・仰向けの4つの姿勢で鼻の通りやすさを測定した研究があります(Angle Orthodontist, 2002)。
その結果、背筋を起こして座った状態から仰向けに近づくほど、鼻の通りは段階的に低下しました。
「体を起こすと鼻が楽になる」という感覚には、こうした裏づけがあります。
体を動かすと、その最中と直後に鼻が通りやすくなります
アレルギー性鼻炎のある15人を対象にしたランダム化クロスオーバー試験では、60分の有酸素運動の最中と直後に、鼻の血流が低下し、鼻づまりやくしゃみのスコアが下がり、鼻から吸い込める空気の量が増えました(International Journal of Exercise Science, 2024)。
運動によって交感神経が働き、鼻粘膜の血管が縮むことが関係していると考えられています。ただし、これは一時的な変化を見たものです。
胸郭を動かす運動を続けた研究もあります
アレルギー性鼻炎のある27人を2群に分け、片方に週3回・8週間のハタヨガを行った試験では、ヨガを行った群で鼻炎症状と鼻の血流が低下し、鼻から吸い込める空気の量が増えました(Asian Pacific Journal of Allergy and Immunology, 2022)。
また156人を対象に6か月間のレジスタンス運動を行った試験でも、鼻と目の症状・生活の質・炎症に関わる血液指標の改善が報告されています(American Journal of Otolaryngology, 2025)。
ヨガの研究は27人と小規模なので、結果は限定的に受け止める必要があります。
では「胸椎の〇番」はどうなのか
ここがこの記事でいちばんお伝えしたい部分です。
背骨に徒手で働きかけると自律神経の指標が変化するのかを調べたシステマティックレビューがあります(Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics, 2019)。18件のランダム化比較試験がまとめられ、関節を小さく動かす手技では交感神経の働きが短時間高まるという報告がありました。
ただし著者らは、エビデンスの質は低い〜非常に低い水準であり、本当の効果の大きさについては不確かなままだと結論づけています。
さらに、筋骨格系以外の疾患に対する脊椎への徒手療法を検討したレビュー(Chiropractic & Manual Therapies, 2021)では、背骨の機能異常に働きかけることで臓器やその機能に影響が及ぶという理論そのものの妥当性に疑問が投げかけられています。
つまり「特定の椎骨が特定の臓器や症状に対応している」という地図には、現時点で十分な裏づけがありません。
私自身の経験について
正直にお伝えすると、私自身も慢性的な鼻炎があり、症状が強いときに胸椎のストレッチをして楽になった経験があります。
ただ、これは一人の体験にすぎません。
同じことをしても変化を感じない方はいます。そして変化が起きたとしても、「胸椎の〇番が整った」からではなく、「体を起こして動かした」ことで説明できる可能性のほうが高いと考えています。
自分の体験を根拠に効果を広げて説明しない。これは当院では行っていないカッピングについて書いたカッピングは意味ない?でも同じ姿勢です。
自分でできること

胸を開いて座り直す
椅子に座ったまま、骨盤を立てて胸を軽く開きます。
仰向けに近い姿勢ほど鼻は通りにくくなるので、まず体を起こすことが基本になります。
背骨を丸める・反らすを繰り返す
椅子に座り、胸を軽く反らします。次に背中を丸めます。これをゆっくり5回ほど。
一度でどうにかしようとせず、1日に何度か行うほうが向いています。
30分から1時間に一度は立ち上がる
動かない時間が長くなるほど、体を起こしている効果も薄れていきます。短い時間でも立って歩く場面をつくってみてください。
姿勢と呼吸のつながりは猫背と浅い呼吸、姿勢全般は姿勢改善のアプローチにまとめています。
先に医療機関へ相談していただきたい場合
次のような場合は、セルフケアより先に耳鼻咽喉科へご相談ください。
- 片側だけの鼻づまりが続いている
- 鼻血を繰り返す、鼻水に血が混じる
- 顔やほおの痛み、発熱がある
- においが分からない状態が続いている
かごしま整体 心晴。の考え方

鼻炎そのものを施術の対象にはしていません
鹿児島市の当院では、鼻炎やアレルギーを施術の対象として掲げていません。そこは医療機関の領域です。
胸郭と背骨の動きは評価します
一方で、胸郭や背骨の動きが硬く、呼吸が浅くなっている状態は、理学療法士として評価と施術の対象になります。首や肩の症状と合わせて確認します。
分かる範囲と分からない範囲を分けてお伝えします
背骨を動かすこと自体には意味があります。一方で「この骨が鼻炎の原因です」という説明の仕方には根拠が足りません。この2つを混ぜないことが、受ける方の判断を助けると考えています。
よくある質問
整体で鼻炎は治りますか?
鼻炎そのものへの効果を示す十分な研究は確認されていません。当院でも鼻炎を施術の対象としては掲げていません。診断と対応は耳鼻咽喉科でご相談ください。
胸椎のストレッチをすると鼻が通るのはなぜですか?
体を起こして動かすと、鼻粘膜の血管が縮んで通り道が広がることが関係していると考えられています。特定の椎骨が鼻に対応しているという説明とは、意味が異なります。
花粉症の時期だけ姿勢を意識すれば効果はありますか?
姿勢や運動の研究で見られているのは、数週間から数か月単位の変化と、その場の一時的な変化です。短期間だけ意識する使い方には向いていません。
薬をやめて姿勢だけで対応してもいいですか?
お勧めしません。薬の内容や量については、処方した医療機関にご相談ください。
まとめ
- 鼻づまりは骨ではなく、鼻粘膜の血管がふくらむことで起きています
- 体を起こすこと・体を動かすことで鼻の通りが変わることは、複数の研究で確認されています
- 一方で「胸椎の〇番が鼻炎の原因」という説明を裏づける十分な研究は確認されていません
- 鼻炎そのものへの対応は医療機関が優先です
胸椎を動かして楽になった経験があるなら、それは背骨が整ったからというより、体を起こして動かしたことの効果かもしれません。そう捉えたほうが、続けやすい形が見つかりやすいはずです。
参考文献
- Hiyama S, Ono T, Ishiwata Y, Kuroda T. Effects of mandibular position and body posture on nasal patency in normal awake subjects. Angle Orthod. 2002;72(6):547-553. doi:10.1043/0003-3219(2002)072<0547:EOMPAB>2.0.CO;2(PMID: 12518946)
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